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相続放棄をしても空き家の管理責任は残る?民法第940条と清算人を解説

    2026/9/7

    • 0円物件・負動産の処分活用支援

    • 相続対策

    相続放棄をしても空き家の管理責任は残る?民法第940条と清算人を解説

    この記事の要点

    • 相続放棄をしても、放棄の時に相続財産を「現に占有している」場合は、相続人か相続財産の清算人に引き渡すまで保存する義務が残ります(民法第940条第1項)。

    • 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述します。放棄した人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます。同じ順位の相続人が全員放棄した場合(ほかに同じ順位の方がいない場合を含みます)は、次の順位の方が相続人になります。

    • 相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所が利害関係人などの請求で相続財産の清算人を選任します(民法第952条第1項)。2023年4月1日施行の改正で名称が変わりました。

    相続放棄をすれば、空き家の管理の責任はなくなりますか?

    一切なくなるとは言えません。民法第940条第1項は、相続放棄をした人が、その放棄の時に相続財産を「現に占有しているとき」は、相続人か相続財産の清算人に財産を引き渡すまでの間、自分の財産と同じ注意でその財産を保存しなければならないと定めています。

    この条文には、何をもって「現に占有している」とするかの定義は書かれていません。ご自身の場合に当たるかどうかは、弁護士にご相談ください。

    2023年4月の民法改正で、何が変わりましたか?

    放棄した人の義務は、「現に占有している」財産を引き渡すまで保存する義務として定められました。2023年4月1日に施行された民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)による改正です。

    改正前の第940条第1項は、放棄した人は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、その財産の管理を継続しなければならないと定めていました。「現に占有している」という条件はありませんでした。

    法務省は、改正前は管理を継続する義務の発生要件や内容が明らかでなく、放棄したのに過剰な負担を強いられるケースがあったと説明しています。あわせて、相続人のあることが明らかでない場合の「相続財産の管理人」の名称も、「相続財産の清算人」に改められました(法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」)。

    この記事は改正後の条文の説明です。2023年3月以前に放棄した場合にどちらの条文が当たるかは、弁護士にご確認ください。

    相続放棄は、いつまでに、どこで手続きしますか?

    自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述します(民法第915条第1項、第938条)。申述先は、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。費用は、申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です(裁判所「相続の放棄の申述」)。

    財産の調査をしても判断する資料が得られない場合は、3か月の期間内に、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます(民法第915条第1項ただし書、裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)。3か月の間に放棄などをしなかったときは、単純承認をしたものとみなされます(民法第921条第2号)。

    相続財産の全部または一部を処分したときも、単純承認をしたものとみなされます。ただし、保存行為などは除かれます(民法第921条第1号)。放棄を考えている間は、空き家を売ったり取り壊したりする前に、弁護士へご相談ください。

    放棄すると、空き家は誰が相続しますか?

    同じ順位の相続人がほかにいれば、その方が相続します。同じ順位の方が全員放棄したとき(ほかに同じ順位の方がいないときを含みます)は、次の順位の方が相続人になります。放棄した人は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされるためです(民法第939条、第889条第1項)。

    順位は、被相続人の子(第887条第1項)、直系尊属(第889条第1項第1号)、兄弟姉妹(同項第2号)の順です。配偶者は常に相続人となります(第890条)。次の順位の方についても、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月で数えます(第915条第1項)。放棄を考えるときは、次の順位の方への影響も、あらかじめ専門家に確認しておくと安心です。

    相続人がいなくなったときは、どうなりますか?

    相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人とされ(民法第951条)、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければなりません(民法第952条第1項)。相続人全員が放棄して相続する人がいなくなった場合も含まれます。清算人は債権者などへの支払いなどの清算を行い、清算後に残った財産を国庫に帰属させます(裁判所「相続財産清算人の選任」)。

    申立てができるのは、利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた方、特別縁故者など)と検察官です。申立先は、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。費用は、収入印紙800円分、連絡用の郵便切手、官報公告料5,582円(家庭裁判所の指示があってから納めます)です。このほか、相続財産の内容から管理費用が不足する可能性がある場合には、申立人が相当額を予納金として納めることがあります(裁判所「相続財産清算人の選任」)。予納金の額は、この記事では示しません。申立先の家庭裁判所にご確認ください。

    ご自身が利害関係人に当たるかどうかは、弁護士・司法書士にご確認ください。

    何から始めればいいですか?

    最初に、亡くなったことと、ご自身が相続人になったことを知った日を確かめます。3か月の数え始めになるためです。

    1. 亡くなったことと、ご自身が相続人になったことを知った日を、メモに残す

    2. 空き家と、ほかの財産や借入金を調べる(民法第915条第2項により、相続人は承認や放棄をする前に相続財産の調査ができます)

    3. 鍵を誰が持っているか、誰が出入りしているかなど、空き家の現状を書き出す(片付けや処分はまだしない)

    4. 放棄するか、相続するかを、弁護士に相談して決める(申述書の作成は司法書士にも依頼できます)

    5. 放棄する場合は、3か月以内に家庭裁判所へ申述する

    放棄するかどうかの判断は弁護士に、申述書の作成は弁護士・司法書士にご相談ください。放棄を検討している間は、空き家を売る、譲る、片付けるといったことを始める前に、弁護士にご相談ください。相続すると決めた空き家について、売る、譲る、当面管理するといった選択肢のご相談は、当社でも承ります。法律・登記・税務や、官公署への届出・申請は、弁護士・司法書士・行政書士・税理士などの各専門家が行う手続です。必要に応じて、連携する専門家をご案内します。まずはお問い合わせください。3つの期限の全体像は相続した空き家、いつまでに何をすればいいですか?、放置した空き家で他人に被害が出た場合は空き家を放置して他人に被害が出たときの責任の記事で解説します。相続した土地を国に引き渡す制度は相続土地国庫帰属制度の記事をご覧ください。

    よくあるご質問

    Q. 3か月を過ぎてしまった場合は、放棄できませんか?

    A. 3か月の間に限定承認や放棄をしなかったときは、単純承認をしたものとみなされます(民法第921条第2号)。期間を伸ばす申立ても、この3か月のうちにする必要があります(裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)。ただし裁判所は、相続財産が全くないと信じ、そう信じたことに相当な理由があるときなどは、相続財産があると分かった時から3か月以内に申述すれば受理されることもある、と案内しています(裁判所「裁判手続 家事事件Q&A」)。当てはまるかどうかは事情によって異なるため、早めに弁護士にご相談ください。

    Q. 相続財産清算人の費用はいくらですか?

    A. 申立ての費用は、収入印紙800円分、連絡用の郵便切手、官報公告料5,582円です(裁判所「相続財産清算人の選任」、2026年10月時点)。このほか予納金を求められることがあります。額は事案によって異なるため、申立先の家庭裁判所にご確認ください。

    Q. 放棄をすると、親族にも影響しますか?

    A. 放棄した人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法第939条)。同じ順位の相続人がほかにいない場合(たとえば子の全員が放棄した場合)は、次の順位の方が相続人になります(民法第889条第1項)。配偶者は、順位にかかわらず常に相続人です(民法第890条)。

    Q. 株式会社HYへの相談は有料ですか?

    A. 初回のご相談は無料です。現状の整理と方向性のご案内までを行い、実務が必要な場合は、事前にお見積りをご提示し、ご同意後に進めます。法律・税務・登記の個別のご判断は、各専門家へのご相談となります。

    ※本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断は弁護士・司法書士・行政書士・税理士等の専門家にご相談ください。制度は改正されることがあります。記載内容は2026年10月時点のものです。

    監修(不動産実務の観点):株式会社HY(横浜駅前の相続・空き家・事故物件・終活の不動産相談窓口)

    代表取締役 田澤 英大(宅地建物取引士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/CFP®/公認不動産コンサルティングマスター)

    ※法律・税務・登記の個別の判断は、監修の範囲に含みません。

    宅地建物取引業 神奈川県知事(1)第033168号

    横浜市西区北幸1-11-5 相鉄KSビル9階

    https://hyconsulting2021.jp/

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